「あぶらあげあるだろ、くれ、匂いする」

その、匂い、
というものに夢中になりすぎているせいなのか、
たどたどしい喋り。


小さい子みたいな。



「ください、でしょ」
「くれ」
「ください」
「く・・・だ・・・さい」

何こいつ、可愛い。

思わず、満面の笑みを浮かべていた。

パックからお稲荷さんを取り出し、
狐の口に運んでやる。

「食べていい?」
「いいよ」

許可を出すと、遠慮がちに、
動物らしく、小さく、かじっ、とひと噛み。

それからアグアグ、と勢いをつけ、
食べ進めると、私の指についた汁まで舐めた。


そんなに好きか?



「美味しかった?」
「・・・」

狐は無言で、うんともすんとも言わない。

「美味しかったの?」
「うるせぇ」


食べてしまったらこっちのものってか?



さっさとまた横になった狐の背で、
狐に舐められた指を拭う。

「拭うな」
「だってよだれ付いたもん」
「・・・」
「具合は?」
「・・・」

無視か。