『誰か、誰か、
 あああ、
 消滅してしまう、
 消滅してしまう』
あまりに必死な、
その声に私は狐の肩を齧った。

「イッテェ!」

狐が大声を上げて、
途端、バサバサバサと音がした。
布達が一斉に飛行機から、
離れて行くのがわかった。

「あっ、てめ、
 逃がしちまったじゃねーか」

最初の感覚と同じよう、
頭の中に、布達が方々に散って行く画が広がった。
ほっとして狐から歯を抜くと、
狐の肩は私の唾でうっすらと濡れてしまっていた。

『まぁ、まぁ、
 ピーナツでもどうぞ』

ザビエルさんが、
笑顔で私と狐にピーナツの入った小袋を渡して来た。
そういえば、朝食も途中までしか食べれていないのに。
騒ぎのおかげで、機内食にもありつけていないのに。
ここまで、一度もお腹が空いていない。
ということに、このピーナツを見て気づいた。

私は、一体どうしてしまったのだろう。


あんなに食いしん坊だったのに。
いくらかの不安を覚えをながら、ピーナツの袋を空け、
中のものを口に運んだ。絶妙な塩加減。

「何これむちゃくちゃ美味しい」

思わず低い声で唸ると、
狐は自分の分の小袋を見て、
私を見て、
とてつもなく悔しげに、
その小袋を私に渡した。

「くれるの?」

「袋、開けて」



不器用かよ。