狐は真面目な顔で、
私の手を握ったまま、
笑った。

「空港のは、ビギナーズラックか?」

どこか安心したような、
柔らかく包むような目。
できないことを、責められなくて良かった。
けど、


・・・どこか・・・行け!・・・行けってば!!


窓の外の布はケロリとしている。

「もーっ、どうして!」

巧くできないことが、悔しくてたまらない。
狐はいよいよおかしそうに、
くっくっく、と下を向いて笑い出した。
しかし、飛行機が妙に傾いたら、
ピタリとその笑いは止まり、
今度は心底怒りを帯びて、
窓の外を睨みに掛かる。

・・・この男、百面相。


『揺らすなカス、燃やすぞ』



ドスの聞いた恐ろしい声。
誰に向けて言ったのだろう?
・・・恐らく窓の外に向けて。

布が一斉に発火したのが見えて、
私は青ざめた。

『御狐様、お許しを』
『出来心でした』
『熱いです』
『消滅してしまいます』
『熱いです』
『実に見事な狐火でございます、
 非常に、熱ぅございます、
 完敗です、
 お願いします、お助け下さい』
『御狐様ぁあぁ・・・・!』


可哀想な布達の声が、
ログインして来た。

「狐、可哀想」

「ん?聞こえねー」
「燃やすのやめたげて!」
「んー・・・」
「やめたげなさい」

無視。