サグラダ・ファミリア

『ではメシアの求める養分を、
 補強する作業に入ろうか』

教団の者が、誰一人いなくなった階段広場で、
サラマンドラが陽気に口を開いた。

鷲鼻は強制的に、龍さんの水を飲まされ、
悪さをしたら龍さんが出てくるよう戒めをされて去っていった。


こちらの問題が、
解決すると、あちらの問題が気になって来る。
ゆうこさんは無事だろうか。
思い立って携帯を開くと、メールが来ていた。

ゆうこさんからだ。


『件名:無題
 本文:サグラダファミリアなう』


緊張感のない一言に、笑みが浮かぶ。


『メシアは今、サグラダファミリアに居るみたい』

『では、そこに終わりを望む者達を、
 向かわせるけ』

重症のソフィスティケイテッドを、
サラマンドラとシンに託し、私は歩いて駅まで行った。

二度目に訪れたファミリアは、相変わらず巨大で造りの細かい建物だった。
内部の七色に輝く、白い世界はやはり幻想的で、
人の世に生きていることを忘れさせる。

「夕子!」

声に振り向くと、腹をぱんぱんにしたゆうこさんが、
ベンチに座っていた。

「ひきとっておいて良かった、
 こんな格好で戦ってこれないもんね」

「うん」

「狐がせっかく私やシンのこと、
 パワーアップしてくれたのに、
 戦いに参加するでもなく、
 休んじゃって、駄目だなぁ・・・」

「ゆうこさんは前半、
 頑張ったんだからいいの」

「この子、何時生まれるのかなあ」

「そろそろじゃない?」

サラマンドラが送った霊体達が、
届いた頃に生まれるはずだ。

「うわ、熱いっ」

肉体の伴う、陣痛と違って、
痛みはさしてないらしい。
ゆうこさんは熱さに顔を顰めているが、
痛みに叫び声を上げる程じゃない様子で、
腹を押さえている。

ファミリアの内部の、木霊する音に包まれて、
一つの命が誕生した。
顔をあげると、恐らく霊界の偉い人たちなのだろう、
数人が柔らかく、微笑んでいた。
メシアを祝福しに来たのだ。

ゆうこさんの手の内に、赤ん坊が居た。

その赤ん坊に、偉い人たちが手を添えていった。
不思議な光景に、私は夢を見ているような、
心地になって、眠気さえ伴った。