サグラダ・ファミリア

バスに響いた声がして、顔を向けると痩せた醜い白人がいた。
大きすぎる鷲鼻のおかげで、顔の印象が全て鼻。
黒々とした眉の下に、ぎょろ目が左右、形違いに埋まっていた。
割れた顎の上で、うっすら開いている唇は下品にてかっていた。

『貴方が子宮で温めているのは、
 尊い、力の王子です』

「子宮とか、言わないで下さい、セクハラです、きもい」

シンがぷっと笑った。

『この王子が誕生すれば、世界の宗教バランスは、
 激変!します!
 何故ならイエスが、生きたイエスが目の前に現われるのですから』

『キリスト教が繁栄したのはイエスの死後だ、
 この子は力の王子なんかじゃない、
 生贄が作った新しいただの命、僕らの子です』

シンの横槍を無視し、鷲鼻は恍惚と私を見つめた。

『奇跡を民衆に広める手段は、いくらでもあるのです、
 イエスが生きたあの時代、口述しか道がなかった、
 それは、情報が広まる速度も落ちましょう、
 しかし今は新しい、人の技術があるのです、
 後に言われるでしょう、インターネット技術は・・・、
 メシアのために発明されたのだと』