シンが頷くのを見て、
ゆうこさんは微笑んだ。

やっと止まって、
乗客が全て避難したバスの中、
私達は早口に、
会議していた。
外からカタルーニャ語の、
声が掛かった。
警察隊と、地元の人が、
破損したバスを囲っていた。

「降りよう」

シンが誘いを掛け、
私とゆうこさんは出口に足を向けた。
一歩、二歩、
ゆうこさんがふいに止まった。

そして、私の顔を見た。


メシアが奇跡を起こす力を持つ子だったとして、
この時ほど完全な、奇跡を起こしたことはない。
ゆうこさんが直感した危険を、メシアは回避した。