特殊なカメラで、撮影した映像のような景色。

真っ白だった空港の床は、
本当に真っ白で無機質な部分と、
それ以外に変化した。

黒い血の汚れが夥しく貼りついている場所が「見える」。
そして、その部分が不浄だとすぐに「わかった」。

狐が赤いものの塊に、シンが青いものの塊に見える。
ザビエルさんは、薄茶の、塊というよりは、モヤ。


神経を集中すると、坊主と聖職者が、
立っている私達の周り以外に、みっしりと何か、
動くものがある。明らかに人じゃない。
けれど人のような部分もある。

上半身だけ、天から出して、じっとこちらを睨んでいる、
女達が怖い。髪がほとんどないのだ。
つるつるの頭に、房単位で貼りついている、
ベッタリした髪が、時々ほろほろと下に落ちる。


突然黒い陰達の中から、牛のような生き物が、
のたのたとはみだした。

「シン様」坊主が叫び、シンの顔が強張った。

牛が青い空気に、締め付けられて崩れる。
血がぼとぼとと出て、腹から何かがはみ出す。


「シン、しっかり仕留めろよ」


狐はまったく別の方を、睨みながら怒鳴った。
狐の睨む先には、顔にお面を被った、
セーラー服の中年男性が、全身びしょぬれで、
こちらに来ようとしていた。