「ソフィスティケイテッド」

生霊のシンが声を掛けると、
ヴァンパイアはけだるく顔を上げた。
狐の死と共に、
生霊たちがくっきりした。
疑問を口にする、心の余裕がなくて、
黙っていたが、
狐の死が生霊たちに、
力を与えたことは確かだ。

ヴァンパイアの目にも、
乗客の目にも、生霊たちは映っているらしい。
不思議で、切ない。

「君は俺に脅されて、
 ここまで来たんだ、
 狐のように、
 君も、
 消されてしまうのは、
 いけない」

シンの顔は青ざめていた。

「Sagen Sie einmal mehr…」

何と言ったのかはわからない、
厳しい声。
ヴァンパイアの顔は、
暗く怒りを帯びていた。

「僕らの身体は、
 今驚く程力に満ちてる・・・。
 狐は恐らく、僕らに力を注ぎ込む形で、
 消滅したんだね。
 空港でゆうこの内側に入ったのは、
 逃げたんじゃない、
 ゆうこに力を託すため。
 そして今の消滅でも、
 自分の力を全て、
 分配して・・・」

ゆうこさんが鼻を啜り、顔を上げた。

「・・・僕らは強くなった。
 僕らは、僕らの力で、
 立ち向かうことができる、
 だからもう大丈夫なんだ、
 助けは要らない・・・。
 人質なんか取って悪かったよ、
 スラップスティック嬢は解放する・・・、
 どうか末永く、生き続けてくれ」

「ふざけるな」