ドン、と大きな音がして、
モンジュイックタワーの辺りに、
火であって火ではない、
狐火の柱が上がった。
人の姿を自力で保てないほど、
弱っているくせに、あんな大技・・・。
大丈夫なんだろうか・・・。

ゆうこさんを見ると、青ざめていた。

「狐は強いよ」

声を掛けると、ゆうこさんはきゅっと歯を食いしばった。

犬達は炎に向かい、オォォーン、
と声を上げ、不安げに目配せをしている。
襲って来るのか来ないのか。

ひときわ身体の大きな犬が、炎をじっと見て、
何か考えているようだった・・・。
犬達は唸ったり、牙を剥き出して、
私達を牽制している。
そこで大きな犬が、一歩、ニ歩、後退り・・・、
身を翻して、山へ帰った。

犬達は王者の退却と、炎を交互に見て、
王者にならって私達に背を向けた。


「やったぁ!」

ソフィスティケイテッドが明るく歓声を上げ、
胸が晴れる。

「狐に感謝、タイミングにも恵まれたね」

シンの声も弾んでいて、
嬉しくてゆうこさんと笑いあった。

「それと、ほら、
 そこ、バス亭、
 バスに乗れたらいいんだけど」

20m先に、
バス亭、列ができているので、
もしかしたら丁度、
バスの来る時間なのかもしれない。

「あああ、バスぅ~、来てぇ~、お願い~」

ふざけてゆうこさんが喚くと、
ゴオ、と大型車の走行音。

バスが登場した。


「凄い、運・・・」


思わず呟いて、はっとした。
御腹が・・・熱い。