「大変なのは、日本を出るまでだよ」
シンが空港の電子掲示板を睨みながら、
苦々しく呟いて、あたりに目配せした。
「おいザビエル」
狐に声を掛けられ、やって来たザビエルさん。
あ、さっきのおじさん、ホントにザビエルって言うんだ!
「はい」
頭の上を丸く剃った白人のおじさん、
日本史に出てくる宣教師、ザビエルに激似なのだ。
その彼がやって来て、
かがんだ。
私達は空港の椅子に座っていた。
「霊視の絵を見せられるか」
「エエ、シカシ・・・」
「できるだけハッキリした奴」
「・・・」
ザビエルさんは困ったように、シンを見て、
シンが頷いたのを確認すると、おずおずと私の手に、
自分の手を添えた。
「アマリ衝撃ヲウケナイデホシイデス、
キット、我々ガ勝利シマスノデ」
手から、火傷するような、温かさが広がった。