一難が去った喜びで、顔を上げると、


狐は初めて、笑った顔を見せてくれた。


少しだけ口端を上げて、
動物的な目を細めると、

顔を傾け、今度は唇に、
チュ、と音。

それから、見つめ合い。
照れ隠しなのか、片手で、あの大きな手で、
狐は私の両頬を掴み、私の顔を不細工にした。

「ブス」

まさかの台詞。


キスの後に言う言葉じゃないよね。
仏頂面に戻った狐の頬を、私は思い切り叩いた。