サグラダ・ファミリア

都心の道端、ダンボールの中で、
震えているシンとその父親と、母の遺影。
宗教法人によって、暖かい建物の中に誘われ、
そこに居る代わりにと信じさせられた神に、
のめり込んで行くシン。
頭が良く、学校では優等生、教団では幹部へ、
異質だが確かに日本社会の中で、
ヒッソリと存在する宗教団体の、
生活に染まっていくシンの姿。

早起きし、掃除をし、教えを詠唱し、
朝食を取るとお布施を払うためのバイトへ。
バイト先である、学校の傍の、
最寄駅のコンビニで、
シンは恐らく、日本人の精神が一番歪み、
重くなる朝の駅の景色を眺め続けた。
目の前で自殺する人間を、何度も目撃した。
9時から始まる学校の門を、
潜る時にはすっかり心の閉じた様子で、
友達とふざけていてもどこか上の空。
ある日話したこともない、目立たないクラスメイトが自殺した。
シンは教えの書を床に叩きつけた。
彼の変化に気づけなかった自分、
目の前でふいに死んでいく人たちを、止められない自分、
ただの人のなんて無力なことだろう。

寒い時、暖かい場所にシンを招いてくれた、
あの人たちのように、救われたい人を救ってあげる、
ただの人以上の生き物が、光の存在が、
この世界には必要だ。


現実に打ちのめされた人間は、
人間の力を否定する。人間を否定する。

「メシアなんかいらないよ」

呟いていた。