サグラダ・ファミリア

消えたゆうこの意識が流れ込んだ、
私夕子が悲鳴を上げたのは、
サグラダ・ファミリアの内部、教会の席、中ほどの隅。

観光客に溢れたその場所は、
七色に輝いて美しかった。
涙が次から次に出る。
「ゆうこさん、イヤ、・・・どうして?
 こんなこと・・・!」
私には同時期に二つの記憶が出来た。
一つはゆうことして、過ごした時間。
もう一つは夕子として過ごした時間。

「狐!!」

はっとして立ち上がった。
私は狐に、二度目の別れを体験させてしまった。
「夕子!」
教会の、席の後ろに並んでいる聖職者達の、
真ん中に立っていたシンが反応をくれた。
シンにも、生霊のシンの記憶が流れこんだらしい。

シンの顔つきは先ほどまでの、
張り詰めた余裕のない様子から一辺して、
優しそうな、寂しそうな、
大人らしいものに変化していた。


「ゆうこさん達を消したでしょ?!どうして?!」

走ってシンに近づくと、シンも一歩前に出た。

「ごめん、どうかしてた!助けよう!!」

シンは額に手を当て、
力強く言い切った。

黒く底のない瞳が、真剣に私を見つめている。
一瞬で人が変わった。そんな印象を受けた。

「どうやって?!」

叫ぶと、シンは悲痛な顔をした。

「もう取り込んじゃったよ!
 私知らなかったっ!あの人たちを生贄にして、
 この子が作られるなんて・・・!!」
「君が受胎を拒むと思って黙ってたんだ、
 俺は最低だ、・・・本当に、悔やみきれない!」

私はシンの頬を平手打ちし、
シンは目から涙を流した。

「ごめん」

「謝っても許されない、・・・どうやったら助けられるの!」
「わからない、方法を探そう」

傍から見れば、日本人カップルの痴話喧嘩だった。
何故か坊主と聖職者が、二人の間に立ち、
喧嘩を収めようと努力している。

ゆうこの力なのか、シンの涙を見た瞬間、
頭に鮮明な画が浮かんだ。