サグラダ・ファミリア

地上に出ると、海の上を走るモノレールが見えた。

「何あれ!乗りたい!!!」

観光客のように、思い切り、
楽しそうに叫ぶと、胸がすっとした。

「乗ろうか」

ぼんやりとした声で、応じたシンの顔にも笑顔があった。
シンはついさっき、土壇場で消滅を拒否した。
いや、消滅しないという誓いに狐が反応し、
揉めている間に審判が先延ばしになった。
シンはきっと、本体のシンに、消えたくない旨を、
真っ向から伝えるつもりで、ああ呟いたのだろう。
それは得策ではないように思える。
本体のシンは、生霊ばかりでなく、
護衛の者の犠牲も、厭わないという様子だった。

『太陽が強すぎる、俺には辛いよ、この道』

白髪がぼやいて、私とクイナが笑った。

『顔が茹でダコみたいになってるよ』

白人種の、根っから日焼けに弱い性質なのであろう、
白髪の顔は真っ赤になっていて、
運動会などで、色の白い子が、走り終わった後に赤くなる、
あの様子を彷彿とさせた。
一方で、クイナはけろっとしている。
人形だからなのか、肌の強い白人なのか、
良く見ると道を行く人々はよく日に焼けて、小麦色になっている。
こちらでは、美白は流行っていないらしい。


『ケイ~!どうして私の身体に、口の穴開けてくれなかったのぉ!』

浜辺に続く道沿いには、
ファーストフードの店が並び、賑やか。
おいしそうな商品を宣伝する看板に、
誘惑されたクイナが白髪を責める。
その横で、シンがクイナに繋がされた手を、
必死に離そうともがいていた。

水着の男達が、クイナに盛んに声を掛けて来たが、
クイナは徹底した無視でやり過ごしていった。手馴れている。
「シン、アイス食べようよ」
「食べても涼しくはならないよ」
シンの寂しげな返事に、
私はにっと笑みを向けた。
「いいの!
 気分を味わいたいの!」
私達の会話に、白髪は微笑した。
安っぽい、オモチャのようなアイスを持って、
白髪が帰った時、私達は消えていた。