サグラダ・ファミリア

「消えないよ狐、
 二度とあんな思い、
 させない、
 大丈夫・・・、
 私は強い」

狐の綺麗な目に涙が溜まった。
頭を撫でてやると、すい、と手を掴まれ、
その手を頬に持って行かれた。
私の手をすりすりと頬に当て、静かに涙を溢す綺麗な人。
狐の細い指は冷たくて気持ち良い。
私は衝動的に、その白い指先にキスをした。
それから狐の頬に、当てられていた手で、
狐の顎を掴み、

唇にキスを、しようとした所でシンに止められた。

「テオ?
 その身体はゆうこのだよ?」

中にオッサンが入っていると、
勘違いされた私の行いを、
振り返ってみると頬に熱が集まった。

「イエ・・・、
 私です、
 ゆうこです」
「ゆうこ、
 君にそんな趣味があったなんて」
「趣味っていうか、
 衝動っていうか、
 あんまり、
 私達のこと心配してるから、
 なんか可愛いぞこいつって・・・」

カシャ、という音がして、
目をやると、
狐が出た木の人形が、
その場に崩れた所だった。

「兄ぃ、脈アリっぽいっすねぇ、
 やったじゃないっすかぁ」

白髪が腕に乗って来た狐に、
囁きかけたが、狐は知らん顔で、
白髪の腕の中に眠りの体勢を取った。

「兄ぃ、めっちゃ体温熱いっすけど」

白髪の言葉に、不機嫌そうに尻尾を振り、
狐は白髪の腕の中で丸くなってしまった。


『グッジョブゆうこ、
 狐、文句言うどころじゃなくなったみたい』
『ゆうこちゃんと狐ちゃんは、
 デキてるの?』
クイナが無邪気な笑顔で聞いて来た。
『デキてないよ、
 ねぇ?ゆうこ』
『何とも言えない』
本当に何とも言えなくて、曖昧な返事をすると、
シンは顔を曇らせ、狐を見た。
『あれっ?!シン妬きもち?!
 妬きもちやいてるの~?!
 可愛い~!!!
 お姉さんが慰めたゲルーーー!』
クイナがシンを抱きしめると、
シンが咄嗟に私の腕を掴んだ。
「俺この人苦手かも」
「見てればわかるよ」
シンはおずおずとクイナの腕から抜け、
恥らってクイナと距離を置いた。
そんなシンにクイナがきゅんきゅんとしている。
私と白髪は窓の外を見た。
電車が止まっている。
終点まで来てしまった。