「それじゃぁ・・・」

くい、と顎を掴まれ、ぬるりと下唇に何か・・・?

頬の内側から、舌にも、生ぬるい感触。
頭の後ろを何度か撫でられて、
気が付くとディープキスだった。

いくら私が物事に動じない女の子だからって。
今朝あったばかりでそれはないだろ。

手錠のないほうの手で、シンの頬を思い切り抓る。

シンは落ち着き払った様子で、
自分の頬を攻撃する私の手をぎゅっと握った。
心臓が跳ねる。

あんな甘い顔をしておいて、その力は反則だよ。

こんなわけのわからない状況で、うっかりときめいて、
私は動きを停止した。
「飲んで」
小さなものが、口内に。何。怖い。
戸惑っていると、耳元に息遣い。
「お願い」
シンの声はしっとりと耳に篭って、
程よい低さで響きわたった。
もう飲むよ。何でも飲むよ!!

「おい!」

狐の掠れて苛立った声が、
飛んできて私とシンを引き剥がすのと、
私がシンに口移された何かを、
飲み込んだのは同時だった。

「何なんだよおまえらはよ!!!
 今朝会ったばっかのはずだよな?!」
「狐、妬いてるの?」
「ぶっ殺すぞ」

カシャ、と音がして、手錠が外される。
ザビエルさんが優しく笑って、去って行った。

「シン、・・・これ、私飲んだの、
 発信機か何か?」
「うん」
「・・・」

テレビのドッキリにしては、道徳とか、
凄い無視してるよなぁ。放送できないよなぁ。
こんなの・・・。