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スペインの朝の空気は乾いて冷たい。

ホテルの傍には人の気はあまりなく、
駅に向かう道はまっすぐ整備されていた。
小学生だった頃、漢字の練習なんかに使っていた、
マス目のあるノート。
あのキッチリした四角の集合を、連想させる地図。
公園の掲示板にあった周辺地図を、
白髪とシン、私の三人は覗き込んでいた。

「なんか地図じゃなくてノートみたい・・・」
「確かに」

呟くとシンは微笑みながら対応してくれた。
優しい物腰に癒されて、私は照れ笑いを浮かべた。
シンと接するといつでも身体が温かい。
白髪は顔を顰め、
白髪の腕にいる狐はウトウトしていた。
つぶらな目をしぱしぱさせ、可愛い。

「今が119番の通り?」
「ここをまっすぐ行って二番目の道路を右かな」
「なんでこんなマス目状になってるんだろう」
「都市計画の一環で、整備されてるんだよ、
 この辺りは新市街だからね」

言われて見ると、舗装された道を飾る並木や、
定間隔で設置されているベンチはピカピカしている。
どこか機械的な、「街」の形をした人工的な装置。
そんな印象。

「わかりやすくていんじゃなぁい?」
白髪は暢気に首を傾げた。