おじいさんがとっととコマセを撒き始めたので、こちらも竿と仕掛けを準備する。

長竿にして、仕掛けは…適当にチヌ用。カサゴくらいは釣れるだろう。
もともとおじいさんが五目釣り派なので予備の仕掛けはたくさんある。


「何か手伝う事なーい?」
早々と回復した神山さんが聞いてくる。
「んー。じゃあこの中身を餌箱に移してくれる?」
「はーい」

舟宿で買ってきた撒き餌や活き餌などが入ったビニール袋を漁る音がした。

あ。大丈夫かな?分からないかも。
そう思って振り返ったのと、
「にぃぎゃああぁぁあぁ!」
神山さんが凄い形相で活き餌パックを放り投げたのは同時だった。

「ながががが」
お化けみたいな顔でパックを見ている神山さんに、
「ど、どうしたの?大丈夫?」
声をかけてみる。

「五十嵐〜」
神山さんは急にカワイイ半ベソ顔になってしがみついて来る。

女子って器用と言うか…大変だな。男が虚勢はるようなものなんだろうけど。

「む、ムカデ?ゲジ?なんか、青っ、青気持ち悪いのがっ」
神山さんの指の先には丸いプラ容器。

「あぁ。アオイソメだよ。活き餌」
「あおいそめ?」
「うん。外国産のイソメだよ」