神山さんは帰りの舟酔いが更に酷くて、車に戻ってもしばらくはウンウン唸っていた。

買い物から帰ってきてもまだ横になっていたけれど、顔色は随分とマシになっているようだ。
「神山さん?」
「ん〜?」
神山さんがこちらを向いたので袋を見せる。
「買ってきたけど食べられる?」
「いただきます!」
いの一番にアイスクリームに飛びつけるなら大丈夫だな。

「海の家は無いけどコンビニは有るからさ。昼まで遊んでコンビニ弁当か、少し行けば食べ物屋も…」

…あれ?
なんか驚いている?

「あ、遊んで良いの?釣りは?」
「魚が釣れる時間は過ぎました。
…遊びに来たのだろ?3時までは付き合うよ。俺とじゃ楽しくないだろうけど」

神山さんは千切れんばかりに頭を振って、
「そんなことない!ありがとう五十嵐!」
大輪の花みたいな笑顔で笑った。


夏はもう終わったけれども、真夏のヒマワリを思い出した。
まだ夏で良いのかもしれない。
時間を少し戻って、
彼女の望んだ夏の海に…。