俺にはお手上げなのでソレを片手におじいさんに聞きに行く。
「おじいさんー。コレなんですか?」
「おう?
あぁ。底こすったか」
いや。何なのか聞いているんですが。
「ホヤだよ。マボヤかな?ウンメェぞ」
ホヤ?
「旬は5月だし、鮮度落ちるとガソリン臭いし、捨てとけ」
「リリースで?」
「海底の岩に張り付く動物だ。一度剥がしたらもう付けないさ。陸で干しとけ」
良いのかなぁ?
というか、動物なのか。


「ただいまー」
俺が戻ると、神山さんは笑顔で出迎え
「いがっ!」
ようとして固まった。

酸欠の金魚みたいにあうあうしている。
「な、何で持って帰っ…」

「マボヤだってさ。美味しいらしいけど」
神山さんが宇宙人を見るような目で見てくる。
「珍味系で『美味しく調理』が大変らしいから捨てて帰るよ」

神山さんが小さくつぶやく。
「なら向こうで捨ててよ」

うーん。割り開けてみたいとは言えないな。コレ。


気付けば太陽が随分と上がってしまっている。
「釣れてない所悪いんだけど、そろそろ引き上げると思うんだ」
ボウズのまま終わりって悔しいだろうけど…。
「うん!わかった!磯で遊んでて良い?」
神山さんが晴れやかな笑顔で言った。

…釣り嫌いになったかな。
少し凹む。