ゆびきり

そして、詠士は自然と昔の話をしてくれた。






「あいつと出逢う前、俺が今座ってた場所は、龍っていう詩人がいたんだよ…」







詠士と真斗はまだ中学生で、かなり不良で性格もひねくれていた。







ある日、偶然あの駅を通ったとき、いかにも不良でしたと言わんばかりの男が座っていた。







詠士は見下すような態度で、男に近づき、しゃがみこんだ。







「いい男がなにしてんですかぁ」







いかにもバカにしたような言い方で、龍を挑発した。







しかし、龍は一切、詠士と取り合おうとはせず、無言で座っていた。







「なんだよ。見た目騙しで、ビビってんの?」






それでも、龍は無視した。






詠士はふてくされながら、ふと、並べてある詩を見た。







「文章で、心が動くって、本当にあるんだって、実感した瞬間だったよ」







突然、無言になった詠士を真斗は不思議そうに顔をのぞきこんだ。