ゆびきり

「悪かったな…」







静寂した夜道を歩いている途中、詠士は静かにそう言った。








「えっ?」








「無理矢理連れ出したからさ、それに、カッコ悪いとこも見せた…」







詠士は、真っ直ぐ前を見ていたが、どこか、寂しそうだった。








「全然、そんなこと思ってないけど…」







気のきいた言葉が出てこない。







「梨由と初めて会ったのは、もう5年前なんだよ」







5年前から出逢ってる…







そんな大きな年数に、私がかなうわけないよ…







そうこう考えているうちに、私の家についた。







詠士は、私の家を知らない。きっと、自然に歩く私に合わせてくれたんだね。







「ここが、私の家だから」








私は、普通のマンションに一人暮ししている。







駅から10分くらいで歩いて帰れる距離だった。