ゆびきり

「詠士、いい加減にしなさいよ。久しぶりに梨由がきたんじゃない…」







倫子は厳しく言った。








「ああ、なんかつまんねー」







詠士は突然立ち上がり、私の方へ向かってきた。








「帰るぞ、日和」







「えっ?!」







そういって、乱暴に私の腕をひっぱり、私は、店の外へ詠士と出ていった。








私は、最初から最後までわけがわからぬまま、あの場を離れた。








でも、そんなことより、乱暴だけど、繋ぐ手に、私は、胸が高鳴る。








緊張して、でも嬉しくて…







詠士の温かくて大きく、細い指を感じていた。







ねえ、詠士…







私の手を握りながら、あなたは誰を思っているの?








知らない詠士と梨由の過去を知るのは、もう少し、後のことになる。








知りたいけど、知るのが怖い…