ゆびきり

またしても、はりつめた空気が流れる。







梨由もさすがに顔がこわばっていた。







「詠士」







倫子が止めようとすると、詠士は言葉を続けた。







「だって、そうだろ?旦那ができても、別で暮らしてさ、愛情もない、ただ子供ができただけ…好きでもない奴との子よく産めるな」







その言い方は酷い…







梨由は宿た命を生かした。それは、どんな人でも、たとえ、愛情がなくても凄いことじゃない。偉いじゃない…








「なんか場違いだったかな…ごめんね、なんか…雰囲気悪くしちゃって…」







そんな酷いこと言われたのに、梨由は私たちを気遣い、笑顔を作る。







「三年ぶりの日本だし、みんなに会いたかったの…だけど、詠士にとって、私は、裏切り者だもんね。ごめん…」








裏切り者?







詠士は梨由を許せていない。







それは見ていてわかる。








だけど、私以外の三人にしかわからない世界がここにある。








私は、ただ、みていることしかできなかった。