ゆびきり

「でもね、大切な友達が本音を引き出してくれるの。本音を出した私と向き合いたいと言ってくれる人がいたの」





梨由は私との会話を懐かしむように、微笑みながら話した。






「本当は逃げていたの。自分の欲を出さないことで、自分を守っていた。でもね、それじゃあ、私は前に進む生き方ができない。きっと、私は政康にも失礼な奴だよ」






再び、目が合う二人は、政康の諦めた表情で目線を逸らす。






「本当は都合が良かったんだよ。いろんなことを諦めて生きてる君が、黙って妻となってくれて…形だけでも良かった。愛情がなくとも…」






初めて聞く政康の心情に、梨由は戸惑いながらも向き合う。







「君の書く詩が好きで、もちろん、会社的な利益も視野に入れてたが、ただ、梨由が好きだった。単純に理由なんてない。好きだから結婚したんだ」






一瞬、時が止まったような胸の高鳴り。





愛情の言葉なんて、一度も吐いたことない政康の本音。