ゆびきり

それからは、梨由は負けじと政康のところへ行き離婚の話をし続けた。





時々、ミサや光哉もその話をしにいくこともあり、次第に政康は社長室からいないことが多くなった。





「また、あいつ逃げたよ。もう、意地になってるよね」






いつものように梨由は光哉とミサに愚痴をこぼした。





「兄さんが逃げる理由、全然分からないんだけどね。社長は夫婦の問題だっていってたじゃん？」






そう、梨由の父親は特に反対していなかった。もともと、一緒に住んでもいない戸籍だけの関係。





政康の仕事ぶりをかっているだけあって、もう娘で政康を縛らなくてもいいと言っていた。






自分の立場は危うくならないのに、ただ逃げているのは政康だけ。






「副社長、本当は梨由のこと好きなんじゃない？」






ふと、ミサが呟いた。






「ありえないでしょ。一緒に住んでないし、二人になっても、会話ないし仕事人間だよ？」






梨由は必死で否定した。
でも、光哉の表情はミサの言葉に同感し、曇りを見せる。