「無事だったよ。そのあと、久しぶりに日和と話ししてきた」





梨由は、詩織をリビングの遊び場まで連れていった。





そして、光哉とリビングのテーブルと椅子が置かれたところで話を始めた。






「ねえ、私、離婚したいって、話してもいいかな?」





梨由の突然の離婚話しに、光哉は一瞬固まった。





「素直に…、私も生きてみたいと思ってもいいのかな?」





不安げな表情を浮かべる梨由に、光哉は一息ついて答えた。





「梨由がそうしたいなら、俺も協力するよ。別に、兄貴の嫁だから一緒に活動してるわけじゃないし」






光哉と兄の政康は、もともと仲の良い兄弟ではなかった。





音楽の才能がある光哉だが、社交性には欠けていて、もともと一人で過ごすことを好んでいた。





それに比べて、政康は社交性に優れて、リーダーシップも取れる。





弟のプロデュースも勝手に始めて、ビジネスとして扱い始めた。






「本当?でも、離婚したら私たち解散かな?このレコード会社に残らないよね。お父さんのコネで私はいるようなものだもん」






父親は、社長とは名ばかりで、副社長の政康が全てを仕切っていた。





社員で働いている時から、社長の座を狙い、上手いこと梨由の父親に気に入られ、娘のシングルマザーを助けて欲しいという父の願いを、副社長昇進という自分の利益のために了承したのだ。





愛情なんて、初めから存在しない夫婦。