内緒の保健室

『カッコ悪……俺』
自分のカッコ悪さに今気付く。
いや、“今”じゃない“今さら”だ。


教室に戻ると、橋野は違う女子と話していた。
『っ…』
行き詰まる。
けど…。
「…あ。雲井くん来た!1つ、とっておきの話し思い出したんだ」いつもの笑顔。
いつもの“雲井くん”という呼び名。
何度も、『蓮斗でいい』って言ったのに、橋野は、「雲井くん」から離れなかった。

『……ん』
働かない頭。
眠い時に我慢して授業を聞いているみたいな感じだった。
「あのねぇ?…」

橋野の話は相変わらず呑気で。
『……』
ただただ俺は、相づちをうって聞いていた。
橋野は、時折、手でジェスチャーしながら話をしていた。
話の内容なんて、勿論覚えてないけど。