「記憶喪失?」 4人の親が同時に言った言葉。 俺は黙って頷いた。 病院の会議室を一室、無理を言って借りた。 ここなら他人に聞かれることもない。 もちろん、稜にも。 目の前に4人の大人が座り、俺一人だけが対面して座っているこの図は、何とも異様に思えた。 「稜には、夕が死んだことを言わないでください。そして、俺が今日から『事故で一部記憶を失った夕』として、稜の傍にいます――」 これが俺の決意だった。