「え、狼の所以を話すんじゃないのかよ?」
「ほんとバカでしょ。ゴメンね、真琴ちゃん」
香美さんが苦笑した。
「前に写真を見たことがあって、樹と美里さんはとってもお似合いだなって思ってました」
わたしがそう言ったら
ふわっと、香美さんがいい子いい子をしてくれた。
「でも案外揉めてたんだよ、あの二人。
樹がほら、喧嘩ばっかしてくるから、しっかり者の美里にしょっちゅう怒られてた」
「へぇ…」
「借金の話は知ってるんだよね?」
「ああ、はい」
「美里んちはね、お父さんが事業に失敗して借金背負って離婚して失踪しちゃったの。
だから樹の借金問題はあの子にはショックで我慢できなかったんだと思う」
「……」



