「お、お世話になります!」
ポカンとしている樹の頭をグッと押さえて祐二さんがそう言い、一緒に頭を下げた。
「損ばっかしてるやつです。どうかよろしくお願いします……!」
その様子を見た専務さんがにこにこと親しみやすい笑顔になる。
「こちらの社長さんから退職のいきさつや普段の勤務の様子を聞き、相原くんには是が非でもうちへ来てもらいたくなりましたよ」
それから名刺を取り出して、樹の前に差し出した。
「よかったら明日にでも事務所へいらしてください。会社の業績や仕事の内容、待遇のことなど説明しますので」
「は、はい。必ずうかがいます」
樹が少しうわずった声で答えた。
心なしか頬が紅潮している。
ちょうどわたしと目が合ってにこりと微笑んだ社長さんの目に、涙が光って見えた。



