「次の部屋にバージョンアップしたらやるっつったろ?」
「……うん」
小さな沈黙。
わかってたけどね、言われることは。
今までわかんなかったけど、なんとなくわかった気がする。
美里さんの話を聞いたから……かな。
「樹がじゃなくて、わたしが半人前だからだよね?」
真っ直ぐに彼を見あげたら、きれいな茶色い目がニッコリ微笑んだ。
「女子大生になるんだろ?」
「……うん」
自分の将来なんてずっと漠然としたものしかなかったけど、もうすぐ3年生だもん、いやでもそれは現実味を帯びてくる。
保育の道に進もうかな、なんてちょっと考えていて……
そんな話をちらっとしたのを、樹はちゃんと覚えていてくれた。
明日になったら変わっちゃうかもしれない、頼りなくてちっぽけな夢を……。



