車止めの向こうには木が生い茂っている。
夏にはあんなに青々としていた葉がもう黄色く色づいていて、そこから漏れ差す陽の光は柔らかくて暖かい。
「鍵もらった? 祐二さんに渡しといたんだけど」
預かっていた樹の部屋の鍵は、昨日病院をあとにするときに祐二さんに託しておいた。
「おう、もらったよ。サンキューな」
そう笑った樹にもう一つ鍵を差し出す。
「これ……。美里さんが渡しといてって」
返しそびれちゃって、と昨日彼女から預かった合い鍵。
「ああ」
短くうなずき、樹は無造作にそれをポケットに突っ込んだ。
「欲しいな、それ」
小さくつぶやいてみる。
「あ?」
「……欲しいよ」
樹はチラッとこっちを見ただけで、もう空を見あげていた。



