1時過ぎ――
樹の会社の前に着き、いっぱい停まったトラックの間を縫って事務所へと歩いてると、不意にグイッと腕を引っぱられた。
「ヒッ……」
驚いて声をあげそうになった口元を大きな手のひらがふさぐ。
な、何? 誘拐?
「しっ、声出すな、真琴。祐二に見つかる」
はぁ? 樹だ。
何? 何?
樹はわたしを引っぱって、一番端に停めたトラックの影に身をひそめた。
「は? 何なの?」
「しっ、祐二に見つかると水ぶっかけられるぞ」
なんて真顔で言うと、樹はわたしを両側から抱えて持ち上げ、トラック後部のステップにちょこんと座らせた。
そうして自分はコンテナの角に体を貼り付け、スパイみたいに辺りをうかがっている。
「おし」
それから樹は忍者のようにササッと戻って来て、わたしのとなりに腰を下ろした。



