朝が待てなくて


車は高速道路を滑るように行く。


なんの苦もなくハンドルを操る美里さんは、やっぱり大人なんだなとつくづく思う。


そんな彼女が言葉を続けた。




「それでもあきらめきれなくて、樹に対する気持ちが自分の中でどんどん大きくなってきちゃって……。

わたしたちって初めて恋を知って、一緒に大人になってきたでしょ? だからどうしても自分の片割れは樹なんじゃないかと思っちゃうの。

勝手だよね、彼を捨てたのはわたしのほうなのに」




手のひらにじんわりと汗が滲んでくる。


だって美里さんの言うことは、わたしがずっと恐れていたことそのまんまなんだもん。




彼女はさらに話を続けていく。


「樹は意地を張ってるんじゃないかとか、今の彼女に気をつかって気持ちを抑えてるんじゃないかとか、断られてんのに自分の都合のいいように解釈したりして」



そう言って美里さんはため息をついた。


「は……うぬぼれもいいとこだね」