その日の樹は確かに様子がヘンだった。
っていうのも元夫が暴れてるからって、美里さんの元へと駆けつけたのがその日だったから。
あの日――。
別れ際、樹は突然部屋に誘ってきた。
車の中でちょっと激しめのキスをされた。
壊れてしまいそうな美里さんを抱きしめて
樹は動揺してるんだとばっかり思っていたけれど、
彼がいつもとちがってたのには、他にも理由があったのかもしれない。
仕事を辞めたこと……不安だった?
将来のことや借金の返済のこと
そういうのが原因でわたしたちまでダメになってしまう気がした?
別れた美里さんの今と、わたしの将来が重なって見えた?
そうならないように、樹は毎日がんばってくれているんだよね?
ベッドに横たわる樹は、やっぱり少しやせたと思う。
こんなにがんばってるのに『もっともっとがんばる』と言って、まだ暗い街へと出かけて行った彼の笑顔を思い出していた。



