それから「ダメだな、俺は」なんて言う。
「余計なお世話だなんて言いながら、やっぱり樹に甘えちまった。
不況だし就職できるかわかんねーし、香美に顔向けできねーなぁなんて考えたら、自分が辞めるとは言えなかった」
「うん……」
「樹、借金だってあるのにさ」
と言って祐二さんはガーッと頭をかいた。
「大丈夫……だよ、樹は」
なんて勝手に言ってみる。
だけど樹はそういう部分をわたしには見せないから、ホントのところはわからないんだ。
社長さんに『自分が辞める』って言ったのはいつ頃のことなんだろう?
あ。
そういえば一度だけ『今から会議だ』って言われて、トラックの中で待ってたときがあった。
あれはそう……
学校帰りに会社で待ち合わせて、仕事へ出る前の樹と会ったときのこと。
……あのときかな?



