「夏にでっかい取引先が一社倒産して、そのあおりでうちの会社かなり仕事が減ったんだ。
そうなると俺らは少ない仕事を取り合わなきゃいけなくなるわけ。歩合制だからね」
ふむふむ。……歩合制って、仕事した分だけお金がもらえるってやつだっけ?
「俺は樹が借金返さなきゃなんないの知ってるからさ、あいつが優先して走れるようにしてやりたいんだけど、樹はそんなふうに気遣われるのがイヤで、さっさと別のバイト決めてきたよ」
「道路工事のやつ?」
「うん。日雇いだから仕事のない日はそっちに行くようにしてたな。初めは慣れなくて熱中症起こしてぶっ倒れたりしてたけど」
「えっ、あの夏の?」
「そうそう。あれが初日だったからペース配分がわかんなくて、飛ばし過ぎてのびちゃったんだな」
あんな頃からそんな大変な事態になってたなんて、わたしは全然知らなかった。



