「俺、あんなに見つめ合いながらしたの、初めてだし」
彼はポソッとつぶやいた。
「真琴の目、だんだんうるんできてメチャクチャ色っぽくて……すげードキドキした」
わ――、やめて!!
ボォッと火がついたように、わたし今真っ赤だ。
「感動しました」
そんなわたしの耳元に唇を寄せると、樹は小声でそうささやいて
それからフッと柔らかな息をもらした。
玄関まで行って、仕事に出かける樹を見送る。
「今日休みか、学校?」
くつを履いた樹は体ごと振り返ってこっちを向いた。
「土曜日だからね。でも部活は行くよ、昨日さぼっちゃったし」
狭い玄関で彼と向かい合う。



