* * *
後ろから樹に抱えられるように、ピッタリとくっついて寝ていたのに、明けがた目が覚めると、彼はいなくなっていた。
あれ?
見渡すと、向こうでキッチンの蛍光灯が灯っている。
小さな流し台を背もたれにして、樹が床に座ってタバコをふかしていた。
「樹?」
「お」
近づいて声をかけてみる。
「どした? 眠れないか?」
逆に訊かれた。
「タバコなんて吸うんだね」
長くつきあってきたけど、タバコを吸ってる樹を見るのは初めてだった。
「おー、何年もやめてたんだけどな」
そこで彼はフッと笑う。
「となりにお前がいると眠らんなくてさ。
落ち着こうと思って、家中探し出して吸ってた」
横にクシャッとひしゃげたタバコの箱が転がっていた。



