ジャーッと、水が流れる音がして体を起こすと、
小さな流し台の前で樹は、水道の蛇口の下に頭を突っ込んで、水を直接ジャバジャバとかぶっていた。
「真琴、服着ろ。送ってく」
タオルで頭をゴシゴシやりながら戻ってきた樹はそう言った。
「え……い、いやだよ」
「タクシー拾って家まで送るから」
そう言いながら、彼はもうパーカーに片袖を通している。
「や、やだよ、樹。このままにしないで。今日はここに泊まりたい」
「あのな真琴、もうわかったから」
「何を?」
「もう大丈夫だから」
「何が?」
「だから今日はもうここまでだ。
今度の休みに二人でどっか泊まりに行こう。
海の見えるおしゃれなホテルでも、森の中の小さなペンションでも、ちゃんと俺が連れてってやる」



