「で、お前は?」
どーすんの、と大淀が顔をのぞき込む。
「……朝まで待っとく。仕事に行く前の樹にもう一度謝ってみる」
自分に言い聞かせるようにそう言った。
「俺と一緒に帰ろうっつっても無駄なんだろーなぁ」
ひとり言みたいにつぶやきながら、大淀がピンポーン、と呼び鈴を押した。
えっ?
「俺があいつと言い合いしてる間に、お前クツ脱いで部屋の奥まであがっちゃえ」
なんて言いつつ呼び鈴を連打している。
「ま、待ってよ。樹怒ってるから出て来ないし、出て来てもメチャクチャ怖いから、大淀もういいよ。大丈夫だから帰って」
あわててそう言う間にも、大淀はピンポーンって押しまくる。
そうして
しばらくすると――
中からカチッと、鍵を開ける音がした。



