「上野」
しばらくそうして泣いていたら、上から声が降ってきた。
え?
見あげると、グレーのスエットにパーカーをはおった大淀が立っている。
「なん……で?」
「念のため見に来た。もしかしてこんなふうに泣いてるんじゃないかって思って」
「や…優し……」
涙がさらにドバッとあふれる。
「何、あいつヘソ曲げてんの?」
ドアの方向をあごでヒョイッと差しながら、大淀は訊いた。
「そんなレベルじゃなくて、すんごい怒ってる」
「へぇ……あいつ怒るんだ?」
「メチャクチャ怖いよ」
「怒鳴ったりとか?」
「ううん。バリア張っちゃって寄せつけない感じ。冷たくって部屋にも入れてくれない」



