「ち……がうよ。大淀はたまたまその場に居合わせただけで」
「なんでそんなにいつも、あいつと一緒にいるわけ? 好きなの?」
「ちがうって。大淀とはそんなんじゃないよ。ただのクラスメイトだし」
「ただのクラスメイトと、お前は」
樹は一瞬、そこで言葉を切った。
「……ホテルに行くのか」
続いて吐きだされた言葉が心を刺す。
冷たい瞳はそれでもやっぱりきれいに澄んでいて、その目に見つめられると、もう何もごまかせなくなる。
『何もしてない』とは言えなくなる。
「……やけになっただけなの、本当に」
やっと探した次の言葉に、樹は小さく息をついた。
「お前だって、大淀の気持ち知ってんだろ?」
「それは…………」
最低だな、と樹は言った。
本当に最低で……、ただ下をうつむくことしかできない。



