朝が待てなくて


キュッキュッとゴムが擦れるような足音がだんだんと近づいてきて、


階段をのぼり終えたその足音の主が姿を現す。




「え」


思わず立ち上がったわたしを見て、その人は短い声を発した。


低く響くその声。




「あ、あの……お帰り、樹」


あがってすぐのところにある樹の部屋の前で、わたしたちは向かい合う。


2週間連絡が途絶えていただけなのに、もっと長い間会っていなかった気がした。




長身に、日焼けした精悍な顔立ち。


無精ひげがちょっと伸びていて、何だか雰囲気が違って見える。……少しやせた?


工事現場で働いてきたままの恰好なのか、ブカッと膨らんだズボンと長Tシャツの、ところどころが黒く汚れていた。


手にしたコンビニの袋には、お弁当とたぶん缶ビールが透けている。