『で、こっちまでバタバタ大変だったのよ。
部屋にあった美里の荷物をわたしが車で届けて、樹の当面の着替えとか、祐二と一緒に持ち帰るという……』
あの日のこと、だ?
『せっかくだしみんなでお鍋しようってことになってたんだけど、樹なんかちょっと箸つけただけで、すぐに仕事に行っちゃうし。
ほら、夜間工事のバイトしてるでしょ。
朝、仕事あがったら祐二んちに帰るから、あとはよろしく、だってさ』
香美さんはそう言って笑った。
そうだったんだ……。
翌朝電話で樹が『今仕事から戻ったとこ』って言ったのはウソじゃなかったんだね。
トラックの仕事じゃないし、関西にも行ってないけど、仕事が忙しいのは本当だったんだ……。
わたしが急に家に行くって言ったから、樹焦ったんだよね。
だって自分はもうそのとき祐二さんの家にいて、部屋には美里さんしかいなかったんだろうから。