こんなのつけて、しゃあしゃあと『何もなかった』と言い切ったわたしは、樹の目にはどう映ったんだろう?
冷ややかな彼の瞳がイタかった。
今まで樹とはケンカもしてきたし、気まずくなったことだってたくさんあった。
だけど怒ってるときも、ぶつくさ文句を言ってるときも、樹はいつだって温かい目をしていたから……
あんな表情は初めてだったよ。
サホリンに電話しようか迷って、カバンからケータイを取り出す。
学校にいる間はずっとマナーモードにしていて、今日はそのまま切り替えるのを忘れてた。
気づかなかったメールが1件届いている。
樹から……。
受信時間を見ると、ちょうど昼間図書館で勉強してたころに届いたやつだった。



