朝が待てなくて


2階の自分の部屋に上がって鏡を見る。


「ウソ……」


はだけた胸もとに1ヵ所、ポッと紅い痕があった。


明穂の言うとおり、まさにキスマーク――。




えっと、これは……。


たぶん大淀がブラウスをつかんだときに、彼の指先が当たって擦れた痕だ。


さわると少しヒリッとする。


それぐらいしか思い当たらない。




樹はきっと誤解したよね?
大淀のキスがつけた痕だと思ったよね?
わたしたちがそういうことしたと思った?




胸もとにとまった樹の視線を思い出す。


彼は真っ直ぐにこの紅いしるしを見つめていた……。



あのとき樹は何を考えていた?


軽蔑したよね、きっと。




『あの紅いやつ、実はキスマークじゃないんだよ』
なんてウソっぽすぎて弁明すらできない。




これはきっと、大淀とのキスをなかったことにしようとしたわたしへの天罰――。