助手席まで移動した樹が、上から柿のかごを渡してくる。
「いらない、こんなの」
押し返すともっと強い力で押し戻された。
「だったら捨てろ」
無理に渡されたかごが斜めに歪んで、中から柿がゴロゴロと転がり落ちた。
バン、とドアが閉まり、トラックが発車する。
エンジン音が響いて、
わたしの真横を銀色の大きな車体がすり抜けて行った。
初めてだ、こんなの。
いつもわたしを家まで送るとき、樹は必ずわたしが門の中に入るまで見届けてから車を出すんだ。
転がった柿がひとつ、車にひかれてペチャンコになって道路に貼りついていた。
これは、わたし……。
ほかの柿と一緒にかごに入れて持ち帰る。
キッチンのゴミ箱につぶれた柿を捨てたとき、のどの奥が熱くなって、涙がこぼれたよ。



