下を向くとボタンを失くしてはだけた胸もとが、車内灯の光に白く照らしだされていた。
指先でそっとブラウスを引き寄せ襟元を合わせる。
その一連の動作を、樹は無言で見つめていた。
「お前は悪くないの?」
「え」
「ウソだって丸わかりだよ」
「…………」
樹の指がスッとのびてきて、わたしのブラウスの第1ボタンを留めた。
伏せた睫毛。長い指。
「誰、お前?」
そうささやいた樹の瞳は、ゾッとするほど冷ややかだった。
「樹、あの……」
「家着いたから、降りろ」
樹がカチッと車内灯を消した。
車のドアを開け、滑り落ちるように道路に着地する。



